民主党は、この「議員の会」を機に政治主導のもとに、建設職人の安全確保に本腰を入れ、国会で真剣に討議することを約束した。

建設業における労働災害は、毎年、全産業の死傷災害の約4割を占め、わが国の基幹産業である建設業の健全な発展を妨げる要因となっている。

その中でも墜落による災害が最も高いことから、平成19年5月、厚生労働省において「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会（座長：三浦裕二日本大学名誉教授）」を発足させ、10回に亘る審議の結果、平成20年10月、ハード面の対策[手すり先行工法による二段手すりと幅木の設置]とソフト面の対策[十分な知識・経験を有する者によるチェックリストに基づく足場の安全点検]の結論を得た。しかし、この結論にも拘らず労働安全衛生規則の改正は一部に止まり、大部分は安全衛生部長通達に委ねられた。

この改正省令と安全衛生部長通達に基づく墜落防止措置の実施状況について、平成22年4月に厚生労働省が発表した5,056現場の実態調査の結果を見ると、安全衛生部長通達による「手すり先行工法」の実施状況は民間工事で僅か17％と低かったばかりでなく、同年7月に同省が発表した平成21年度の墜落災害統計に基づく効果分析の結果を見ると、「改正省令等に基づく墜落防止措置を実施せず」は全体の90％にも及んだ。しかも、「平成22年における労働災害発生状況（速報）」によると、本年7月7日現在の建設墜落死亡災害は、前年同期比で４６％増と急増している。

墜落災害防止に最も効果的な「手すり先行工法による二段手すりと幅木の設置」を確実に行うためには、最早、安全衛生部長通達による指導では限界であり、「省令化」して義務化するしかない。本組合は、民主党に対し、以上の点を真摯に訴えたところ、命を大切にする民主党にとって極めて重要な課題であるとして、自主的に「議員の会」を開催することとなったものである。

小野辰雄理事長は、「議員の会」の挨拶で「政治主導の下で調査研究会のハード・ソフト両面の対策を省令化し、『命の人権』を救って欲しい。官と民の工事で安全環境に格差があるのは「法の下の平等」に反する。さらに労働基準監督署において墜落防止措置の実施を確実に監理監督するようにして欲しい。」と訴えた。

続いて、三浦名誉教授が、「欧米先進国では事故災害はすべて元請責任。韓国の例にならい、日本も一人親方を法律で廃止すべき。行政責任の最たるものが部長通達だ。」と語った。さらに2名の若手の一人親方も出席し、建設現場の状況を切々と訴え、「現場では一側足場が増えている。また一人親方が多く、労災保険に入れない。」と述べた。

このような本組合及び学識経験者、さらに一人親方の真剣な訴えに対して、民主党の各国会議員からは、様々な質問が出た。

会の終了にあたり、前田武志議員は、「ここまで看過してきたのは政治の責任であり、不作為である。今回参加した国会議員も含めてこうしたことは党派を超えて速やかに実現しなければいけない問題だと思う。身につまされる話であった。この問題を国会で早急で議論できるように、今日は勉強会であったが各種委員会幹部や党の幹部と相談しながら実現できるスタートにしたいと思う」と語り、辻恵議員は、「民主党としてこの要望をしっかり受け止め、実現したい。この勉強会を今後とも続けたい」と語った。

　なおオブザーバーとして厚生労働省からは、田中正晴労働基準局安全衛生部安全課長、田中敏章同部建設安全対策室長及び船井雄一郎同室技術審査官が、国土交通省からは須田健介建設市場整備課長補佐が出席した。

前田武志先生ブログ　http://ameblo.jp/maetake-diary/entry-10670049513.html

辻恵先生ブログ　http://tsuji-ganbaru-sakai.jp/index.php?UID=1286440835

会場隣りの議員会館に、省令さえも守られていない足場が設置されていた

会場の衆議院第二議員会館に隣接する会館を見ると、改正省令で設置することが義務付けられている「下さん」又は「幅木」がなく、最上層に手すり枠があるのみであった。確かに安全衛生部長通達に基づいて「手すり先行工法」を採用はしているものの、墜落の危険性のある「手すり先送り方式」を使用しており、肝心の二段手すりと幅木が設置されないまま組立が進められていた。
「安全衛生部長通達はおろか労働安全衛生規則さえも守られていない足場が国会で使われているなんて！！」と出席議員からも指摘があった。